京都三大学教養教育研究・推進機構(教育IRセンター主催)「人文・社会科学系科目担当者会議」を開催しました

【日時】2013年12月12日(木)15:00~17:30

 

【場所】京都府立大学 本館合同講義棟第一会議室

 

【講師】児玉 英明 特任准教授

(京都三大学教養教育研究・推進機構 教育IRセンター)

(京都府立大学 教養教育センター)

 

【演題】「問う力・書く力を鍛える教養教育 ―質保証の文脈をふまえて―」

【講師コメント】

中央教育審議会『学士課程教育の構築に向けて(答申)』では、「各専攻分野を通じて培う学士力~学士課程共通の学習成果に関する参考指針~」を示すことで、各大学における学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)の策定や分野別の質保証枠組みを促進・支援することがうたわれています。そこで示された「学士力」を、教養教育の担当者は、どのように受けとめるべきでしょうか。

 

本報告では、「教養教育を担当する教員は、自分の専門科目のみを教えるのではなく、授業を通じて、『ライティング能力』や『論理的思考力』など、学生の汎用的技能を向上させるようなプログラムを開発する必要がある」と主張します。例えば、哲学の先生が哲学を教える、経済学の先生が経済学を教えるといった教養教育から脱却し、教員も「哲学が主専攻だがライティング教育も副専攻」、「経済学が主専攻だがファシリテーション教育も副専攻」といったように、「専門科目にプラスして、すべての学問の基礎となる汎用的技能の教育を副専攻として自覚的に取り組むような教養教育」が、これからの教養教育の担当者には、求められているのではないでしょうか。

 

本報告では、経済学を専門とする報告者が、「初年次教育としてのライティング教育」にどのように取り組んできたのかをお話しします。ライティング教育を通じて、論理的思考力を養成することが可能ならば、それはいかなる教材を利用して、いかなる小論文を書くことを到達目標とするのかについて、具体的な指導案や教材例を提示しながら説明をします。

 

報告者が担当する科目「問う力・書く力」では、個人研究レポートの作成を目標にします。その際に求められる「問いの立て方」について、どのように指導を行うかについて、紹介します。特に、「問いの逆算による推敲指導」という方法に力点を置き、学生一人ひとりが、自らの問題意識に基づいて問いを立て、それをいかに個人研究レポート作成につなげていくかについて、その指導過程をご報告します。

 

最後に、教養教育の質保証をめぐる論点について、整理します。最近、教養教育を再構築しようという動きが出てきています。1991年の大綱化以降、ほとんど注目されなかった教養教育に、再度、光が当てられています。なぜ、今日、教養教育を再構築しようという流れが生まれてきているのでしょうか。本報告では、中央教育審議会『学士課程教育の構築に向けて(答申)』2008年と、日本学術会議『21世紀の教養と教養教育』2010年を対比しながら検討し、教養教育をめぐる現在の論点を浮かび上がらせます。そして、「時代が求める新たな教養教育」を求めるに際しても、「市民性の涵養」といった教養教育の源流をふまえる必要性を強調します。

 

【参加者】23名

・京都工芸繊維大学 6名

・京都府立医科大学 3名

・京都府立大学 5名

・京都三大学教養教育研究・推進機構 9名

 

人文・社会科学系科目担当者会議の様子

 

 

【講演概要】

Ⅰ 講義概要 ―リベラルアーツゼミナール「問う力・書く力」―

(1)「高校の学び」から「大学の学び」への移行支援

 

(2)他大学にみる教養教育改革の取組み

①質保証の文脈その1

 

(3)学士力を形成する基礎的な素養

①質保証の文脈その2

 

(4)「考えるという行為」と「書くという行為」の相関

①「読む」という行為は「書く」という行為を伴って初めて完結する

②問いを意識しながら読み、問いを意識しながら書く

 

(5)教育実践の事例①

①「考えること」をどのように定義するか

1)吉野源三郎・丸山真男の事例

2)池上彰の事例

②「書く力」「考える力」の養成を目的としたライティング教材①

③なぜ小論文入試で人生相談が取り上げられるのか

 

(6)教育実践の事例②

①「類似からの議論」に反論することで論理的思考力を高める

②「書く力」「考える力」の養成を目的としたライティング教材②

③回答のポイント

④配布プリントの事例と作り方

⑤解答例

 

 

Ⅱ 「問い+答え」の型をとった文章(小論文)を書く練習

(1)小論文とはどのような文章か

 

(2)到達目標の明確化 ―「問い+答え」の文章を書く練習―

 

(3)「問い+答え」の型をとった文章ができるまでの推敲過程

①初学者が出してくる答案

②「心に浮かんだこと」をそのまま書いただけ

③論文とは「問い+答え」の文章

④「問いの逆算」による推敲指導

⑤初年次教育で到達すべき第一段階

 

 

Ⅲ 推敲の過程と答案添削の事例

(1)問いの逆算という指導法

 

(2)初稿を改善するための添削指導

 

(3)学生の答案事例

 

(4)教員が行うべき添削指導と添削事例

 

 

Ⅳ 「問いの立て方」に関する指導法と個人研究レポートの作成

(1)「問題を正しく立てられたら、答えを半分見出したも同然」

 

(2)質問ができない大学生

 

(3)考えることの出発点は何か

 

(4)問題関心を疑問文で表現する

①レポート作成の初期段階

②自分の問題関心がどこにあるか?

③問題関心を疑問文で表現してみる(問いを作る)

 

(5)どうしたら、優れた問いの立て方ができるのか?

①問いの二形態の意識化

②問いのブレイクダウン

 

 

Ⅴ 共同化カリキュラムにおける担当科目の位置づけ

(1)京都三大学教養教育研究・推進機構の理念(育成すべき学生像)

 

(2)担当講義の位置づけ(カリキュラム・マップ)

 

(3)質保証の文脈その3

①育成したい学生像をもとにした調査票の設計

②教養教育の間接評価 ―東京大学「教養教育の達成度についての調査」―

③教養教育の間接評価 ―京都三大学教養教育研究・推進機構の理念から―

④教育の内部質保証システム

 

 

Ⅵ 教養教育の源流と歴史

(1)教養教育の歴史① 戦後の学制改革と教養教育の導入期

 

(2)教養教育の歴史② 1950年代から1991年の大綱化まで

 

(3)教養教育の歴史③ 今日までの教養教育改革の10年の特徴

 

 

Ⅶ 時代が求める新たな教養教育とは何か?

(1)中央教育審議会『学士課程教育の構築に向けて(答申)』2008年と日本学術会議『21世紀の教養と教養教育』2010年の対比

 

(2)「教養」という用語を使わない中教審答申

 

(3)コンピテンシー測定テストの問題

 

(4)教養教育における不易と流行

 

(5)道徳教育と教養教育 ―吉野源三郎『君たちはどう生きるか』にみる戦後「修身」が「社会科」に統合されたことの意味―

 

 

Ⅷ おわりに

(1)教養教育の保守本流を担う覚悟を持つ

 

(2)各教員の専門性を基礎にして、その上で、教育方法の工夫を先導する

 

(3)教養教育の質保証と国際共通テスト

 

(4)教育プログラムの大学間比較の指標 ―情報公開の現況―